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輪島市仮設団地での法律相談を終えて

2026.09.30

令和8年4月に東京丸の内法律事務所に入所しました弁護士の水野七海です。

本年5月に第二東京弁護士会・災害対策委員会の幹事に就任し、9月25日に令和6年能登半島地震・豪雨災害の支援のため、石川県輪島市の仮設団地へ行ってまいりました。

以下、そのご報告をさせていただきます。

 

1 被災地支援のきっかけ

私が被災地支援をするきっかけになったのは、大学1年生の時に参加した西日本豪雨の土砂掻き出しボランティアです。濁流に飲み込まれる家屋のニュース映像を見て、居ても立っても居られませんでした。高校の卒業旅行で広島を訪れていた私にとって、西日本豪雨は自分には関係のないどこか遠い場所の出来事ではなかったのです。卒業旅行を共にした同級生と広島県坂町に現地入りしました。

このボランティアをきっかけに、岡山(倉敷市真備町)、岩手(陸前高田市)、熊本(熊本市、合志市)などの各被災地に足を運ぶようになりました。同時に、災害・防災分野にも興味を持ちました。サイレンを鳴らして火災現場に向かう消防車を運転した経歴もあります。

(防災訓練の際の一枚)

10年前の熊本地震では益城町の仮設住宅にお邪魔して現地の人の生の声を聴きました。そこで聴いたのは、住宅修理業者からの高額請求に悩んでいる人の切実な訴えでした。当時法学部生だった私は、「法律の立場から困っている人の力になりたい」との思いを抱き、弁護士を目指しました。そして今、自分の原点である被災地支援に携わらせてもらっています。

 

2 石川県輪島市の仮設団地での活動

今回の相談場所は輪島市の仮設団地。金沢駅から能登半島の方に車で約2時間の場所に位置します。60世帯ほどがお住まいだとお聞きしました。それだけ多くの方が元の住まいに住み続けられない状況に陥ったということを意味します。

仮設団地には法テラス石川の方と弁護士2名で伺いました。

午前9時半に金沢駅を車で出発し、1時間ほど走らせた西山PAで休憩。地図を見ると能登半島がいかに細い地形をしているのかがわかります。

(西山PAの「ふるさと紀行『のと里山海道』ごあんない」看板)

さらに1時間ほど車を走らせ、輪島市の仮設団地に到着しました。

(仮設団地集会所に掲載のチラシ)

茶話会は仮設団地の集会所で行うのですが、集会所のセッティングと併せて「法テラス号」の設営を行います。法律相談に発展する場合には、相談内容の秘密を保つためです。

(法テラス号)

事前にチラシなどで告知してもらっていましたが、開始直後の参加者はゼロ。待っていても始まらないということで、仮設住宅に戸別訪問に伺い、チラシを手渡しするとともに集会所で茶話会をやっているのでぜひ参加してくださいとお伝えしました。

戸別訪問中、団地の広場でお話し中のお2人がいたので、思い切って声をかけ、輪に入れてもらいました。そこでのお話の途中、茶話会に3名いらっしゃったとのことで、私は急遽集会所へ。集会所では、すでにもう一人の弁護士にお1人が相談されており、私はお2人と茶話会。お茶とお菓子をつまみながら、能登の農業の話や仮設団地から見える山が地震で影響を受けたこと等を教えてくださいました。

お話の途中で、一人の方が「実は相談したいことが…」と茶話会から法律相談に。災害復興住宅融資(リバースモーゲージ型住宅ローン。注1)に関連するご相談でした。

ご相談が終わると、集会所近くで音楽が聞こえてきました。音の鳴るほうへ足を運んでみると、軽トラックを発見。毎週1回、スーパーの移動販売が仮設団地にやってくるのだとか。多くの人で賑わっていました。せっかくの機会だと思い、移動販売に来た方々に茶話会の宣伝を試みましたが、皆さん買い物のため茶話会への参加者はなし。仮設団地からスーパーに行くのには自動車が必要な距離で、この移動販売が貴重な機会だと教えてもらいました。

集会所で待っていると、先ほど茶話会に参加した方からコーヒーの差し入れをいただきました。このコーヒーを飲んでいるとあっという間に午後3時になり、茶話会は終了しました。

午後5時に金沢駅到着、新幹線で帰路につきました。

 

3 法律相談を終えて

輪島市までの道中、道路工事のため片側交互通行の箇所が多数ありました。看板を見ると「地震の復旧工事のため」との記載が。能登の復旧・復興は現在進行形です。

私は熊本地震無料法律相談(注2)も担当しているのですが、災害の種類(地震、豪雨)や地域特性、発災からの時期等によって被災された方が抱える悩みはそれぞれ異なりますし、移り変わります。ご相談を受ける身としてそのことをよく理解し、手を差し伸べ続ける必要があります。

時には法的な解決が困難なご相談にも直面します。しかし、そのようなときでも「代わりに、例えばこのような手段はどうでしょうか?」とご提案ができる場合もあります。一人では抱え込まずに、ぜひご相談ください。ご相談者さんとの対話の中で、思わぬ解決策が浮かんだこともあります。

私は、相談が終わった時に、少しでもご相談者さんが前を向けるような法律相談を目指しています。「ありがとう。気持ちが楽になりました」と言われた時には、この活動をしてよかったと強く思います。

最後になりますが、今回の活動が少しでもお役に立てていれば幸いです。

 

注1:災害復興住宅融資(リバースモーゲージ型住宅ローン)

住宅金融支援機構が提供する住宅ローンの特例。罹災証明で半壊以上の認定を受けた60歳以上の方が、自宅と土地を担保に融資を受けることで、毎月の支払いが利息のみになる等の特徴がある。

注2:熊本地震無料法律相談

(出典:https://www.nichibenren.or.jp/activity/human/shinsai/2607_kumamoto.html#soudan)

弁護士 水野七海

 

 

「価値創造を加速する知財・無形資産投資・活用のガイダンス」の公表~ポイントと実務への影響

2026.09.17

2026年8月3日、「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(内閣府並びに経済産業省)は、「価値創造を加速する知財・無形資産投資・活用のガイダンス」を公表しました。

本ガイダンスは、改訂されたコーポレートガバナンス・コード(CGコード)を踏まえ、知的財産等の無形資産(「知財・無形資産」)を企業価値向上の源泉として捉え、その「創出・取得・強化・保護・収益化」を経営戦略に組み込み、投資家等へ説明することを取締役会に求めています。

対象となる知財・無形資産は、特許権、商標権、意匠権、著作権といった知的財産権に限られず、技術、ブランド、デザイン、コンテンツ、データ、ノウハウ、顧客ネットワーク、信頼・レピュテーション、バリューチェーン、サプライチェーン、さらにはこれらを生み出す組織能力・プロセスにまで及びます。

1 ガイダンスが目指す「攻めの参入障壁」と知財投資の可視化

本ガイダンスが重視するのは、知財・無形資産を「中長期の成功のタネ」として位置付け、攻めの参入障壁を構築し、価格決定力やゲームチェンジを生み出すことです。従来、知財戦略は権利取得や侵害対応を中心に語られがちでしたが、今後は自社の市場での立ち位置、競争優位の源泉、他社との連携可能性を踏まえ、事業戦略と一体で設計することが求められます。特に、知財・無形資産への投資は、短期的には費用として計上され利益を押し下げる方向に作用しうる一方、中長期的には限界利益の向上や持続的成長に寄与し得るため、その因果関係と時間軸を可視化し、適切な「重要業績評価指標(Key Performance Indicator、KPI)」を設定することが重要です。

2 5つのボトルネックと対応策

本ガイダンスは、日本企業における主要な課題として、以下の5つのボトルネックを挙げるとともに、その解決に向けた対応を提示します。

①「取締役会・経営陣の体制」

⇒取締役会で知財・無形資産への投資を経営計画の議題に組み込むこと、
知財・無形資産の創出・取得・強化・保護・収益化を統括する「執行責任者(担当CxO)等」の責任体制を整備すること

②「中長期の価格決定力を支える参入障壁の構築・移転・活用」

⇒自社の事業プロセスを細分化して知財・無形資産を軸とした視点で可視化すること、
他社との連携による経営資源の補完を行うこと

③「投資効果が短期利益に現れにくいジレンマ」

⇒上記因果関係と時間軸の可視化を行うこと

④「戦略的な部門間連携・人的配置」

⇒知財部門と事業・技術・経営企画・財務部門が連携すること

⑤「投資家への発信不足」

⇒投資家に対して知財・無形資産が将来価値にどう結び付くかを説明すること

3 知財実務・契約実務への影響

本ガイダンスは、知財実務を「守り」から「価値創造」へ拡張する重要な契機といえます。ライセンス、共同研究、業務提携、M&A、データ利活用、ブランド管理等の契約実務においても、単に権利帰属や秘密保持を定めるだけでなく、どの無形資産を誰が創出・利用・収益化し、どのように競争優位につなげるかを明確に設計する視点がこれまで以上に重要になると考えられます。

企業は、本ガイダンスを踏まえ、知財・無形資産を経営、契約、開示、ガバナンスの横断的テーマとして再点検することが推奨されます。

 

(参考資料)
内閣官房「政策会議」ウェブサイト
知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会「価値創造を加速する知財・無形資産投資・活用のガイダンス ~コーポレートガバナンス・コード改訂を機会に、企業価値を向上させるために~」
知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会「価値創造を加速する知財・無形資産投資・活用のガイダンス ~コーポレートガバナンス・コード改訂を機会に、企業価値を向上させるために~ 付属資料」

弁護士  笹本   摂
弁護士  向 多美子

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