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中小企業経営者の高齢化に大企業はどう備えるか

2019.07.05

Q.

当社は上場している自動車メーカーですが、下請の部品メーカーには経営者が高齢化している取引先が多く、部品供給を続けてもらえるか不安があります。最近はマスコミなどで中小企業の事業承継対策がよく取り上げられていますが、大企業はどのように備えておけばよいでしょうか。

A.

言うまでもなく、ビジネスにおいては、仕入れ、生産、組み立て、輸送、販売など様々な場面で大企業は中小企業に依存しています。サプライチェーンを点検し、途絶させないように対策をとりましょう。

1.日本の中小企業の状況の概要

中小企業の経営者年齢の分布(年代別)(下図参照)を見ると、1995年の時点では経営者年齢の山は47歳程度であったものが、2015年では66歳に移動しており、この20年間で約20歳も高齢化が進んでいます。円滑な事業承継が進まず、この傾向がこのまま続くとすれば2015年~2020年の5年間に新たに70歳に達する事業者は約30.6万人。同様に75歳に達する事業者は約6.3万人と推計され、2020年頃に団塊世代の経営者の大量引退時期が到来することが予測されています。

なお、中小企業者経営者の2人に1人が自分の代で廃業を予定していると言われ、廃業予定企業のうち約3割の企業が、後継者難が理由と回答しています(日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」(2016年2月))。

こうしたことから、日本ではその時期までにどれだけの中小企業で実効的な事業承継対策を講ずることができるかが、ポストオリンピックを切り抜けるうえでの大きな課題となっています。

出典:中小企業庁「中小企業の事業承継に関する集中実施期間について
(事業承継5ヶ年計画)」(平成29年7月)より抜粋

2.中小企業の事業承継対策が大企業との取引に及ぼす影響

以上の中小企業の事業承継対策の問題は、中小企業自身だけの問題ではありません。言うまでもなくビジネスにおいて大企業は中小企業に下請けや仕入れの多くを依存しています。昨日まで取引をしていた中小企業が突然無(亡)くなる、活動を停止するといったこともあるでしょう。

厚生労働省の調査などによると、日本人男性は60歳を超えると急速に生存率が低下します(参考:平成29年簡易生命表)。

厚生労働省「平成29年簡易生命表の概況」P.8〜9を活用して作成)

中小企業の経営者が死亡しない場合でも、突然の脳梗塞や心筋梗塞などの重大な病気になることも十分ありえます。その場合に大企業にはどのような影響があるでしょうか。以下のような事態が生じるおそれや心配はないでしょうか。

・下請企業に注文していた加工ができずに製品を完成できない。
・サプライチェーンが途絶し、部品などの仕入れができずに生産ラインがストップする。
・大量に生産していた商品がエンドユーザーまで行きわたらない。
・販路としていた中小企業が相次いで廃業し、販売先を喪失した。

前述のような状況で中小企業が廃業したら、貴社のビジネスは成り立つでしょうか。

3.東日本大震災で得た事業継続計画という教訓

以上に述べたようなサプライチェーンの途絶が、2011年の東日本大震災でも起きたことは記憶に新しいでしょう。東日本大震災の発生時点では、大震災は東日本の沿岸部の地域の問題であり、震災の被害が直接なかった地域の企業にとっては、まさか自社のビジネスに影響があるとは思わなかった人も多いのではないでしょうか。しかし、その影響はすぐに震災で直接的な被害がなかった地域にも及びました。たとえば自動車をはじめとする製造業などがサプライチェーンの途絶により日本全体の生産活動に影響を与えたことは記憶に新しいです。

大震災の問題は「事業の自然災害による地域的なリスク」が日本全体に及んだ例ですが、中小企業の事業承継の問題は「事業経営者の年齢による広域的なリスク」が日本全体に及ぶ例です。大震災後には、部品供給などのサプライチェーンを一極集中させることなく多様化させたりするといった対応を含む事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を策定し対策が取られることなどがあったかもしれませんが、中小企業の事業承継問題に対しても、このような対策を講ずることが重要です。中小企業の事業承継問題はマクロの視点からは、ある程度の予測はつきますが、全体としてはジワジワと、個社ベースで見れば「いつか突然、必ず発生する事象」なのです。

4.おわりに

このように、大企業も中小企業の事業承継問題は、これを一種のBCPの問題として捉え、サプライチェーンを点検し、その対策を実施すべきものです。

ただ、事業承継は、事前の調査や支援を通じて回避・影響を最小化できる問題でもあります。具体的な対策は「大企業が取り組むべき取引先・協力先中小企業の事業承継対策の出発点」を参照ください。

なお、本ブログはBUSINSS LAWYERS 2018年11月9日の当職の記事の形式を修正して転載したものです。ご興味のある方はご参照ください。
https://business.bengo4.com/practices/940

弁護士 幸村 俊哉

民法改正と契約書~第1回 履行請求権~

2019.06.04

平成29年、民法の債権編を中心とする大規模な改正法が成立しました。ここでは、従来明文化されていなかった判例による解釈が明文化されたり、定型約款のように新たな規定が新設されたりするものなど、実務への影響が少ないものから大きなものまで、多岐にわたる改正がされています。 民法(債権関係)の多くは2020年4月1日から施行されます。
この改正により、契約の見直しが必要となってきます。本記事では、契約の見直しが必要となる改正点、今後契約を締結するにあたり注意すべき点にスポットを当てて紹介していきます。

1 改正の概要

従前、債務の履行が不能である場合、債権者は履行を請求することができないとされてきましたが、平成29年改正前民法では、この点が明記されていませんでした。
改正法では、債務の履行が不能である場合には、債権者は履行を請求することができないことを明記し(改正民法412条の2第1項)、債務の履行が不能であるか否かは契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして判断されるとしました。
 「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らしてとは、契約の内容(契約の条項)、契約の性質(有償、無償など)、契約の目的、契約締結に至る経緯など一切の事情、取引に関する通念を考慮することを意味しています。

2 契約書への影響

履行不能の判断事由に明記されたことから、「契約の目的」が今後重要になってきます。例えば、従来の契約書では、契約の第1条に、以下のような規定を設けていることがあります。

第1条
本契約に基づき、甲は乙に対し、第●条に定める業務を委託し、乙はこれを受託する。

上記のとおり、改正法では契約の目的が履行不能であるか否かの考慮要素となるので、契約の目的(業務委託契約であれば、特定期日までにシステムを導入することを目的とする等)を盛り込んでおくと、どのような事態になったら履行不能となるのかが明らかになり、履行不能の場合の交渉も行いやすくなります。

なお、契約当事者が特約によって履行不能となる事由を定め、実際にその事由が発生した場合、履行不能として扱われると考えられます(例えば、輸入した部品を使用する機械の製造委託契約において、為替相場が一定程度変動した場合には履行不能扱いとする旨が定められ、実際に契約に定める為替相場の変動が発生した場合、契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして判断した結果、現実には履行が可能であったとしても、履行不能として扱われる等。)。そのため、履行不能となるべき事由を契約上明確にしておくことも、今後は重要になってきます。

弁護士 六角麻由

弁護士ブログを立ち上げました

2019.01.07

東京丸の内法律事務所のホームページで、この度弁護士ブログを立ち上げました。

法令、裁判例等の解説や、セミナー開催、書籍・論文執筆等の各弁護士の活動報告を中心を発信して参ります。

今後ともよろしくお願いいたします。

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