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独占禁止法の確約手続について

2025.03.13

独占禁止法の確約手続について、令和6年7月3日、公正取引委員会(“公取委”)は、運用の変更を行うと発表しました。

そもそも確約手続とは何か?今後は何が変わるのか?という点について解説するとともに、これまでに認定された確約計画の具体例を紹介します。

 

1 確約手続とは

「確約手続」とは,独占禁止法の規定に違反する疑いのある行為(“違反被疑行為”)を行っている又は行っていたと公取委から通知を受けた事業者が、自主的に違反被疑行為を排除する計画(“確約計画”)を策定し、公取委がその計画を認定した場合に、排除措置命令や課徴金納付命令(法的措置)を行わないとする手続であり、独占禁止法上問題のある行為を早期に是正するための制度です。

確約手続は平成30年12月に導入され、今までに21件[1]の確約計画が認定されています。

確約手続の対象となるのは、全ての独占禁止法違反の行為類型ですが、ハードコアカルテルなど違反が重大な場合等は、確約手続の対象となりません(確約手続対応方針5)。

<詳しくはこちら「確約手続の対象とならない類型」>

また、違反被疑行為が既になくなっている場合は、一部の行為類型に限定されます。

<詳しくはこちら「違反被疑行為がなくなっている場合の対象行為類型」>

 

確約手続は、公取委が違反被疑行為を行っている事業者に対し、

①問題となった行為の概要、

②違反する疑いのある又はあった法令の条項、

③問題となった行為を排除するための排除措置計画、又は問題となった行為が排除されたことを確保するための排除確保措置計画の認定を受けるための申請をすることができる旨

の通知(“確約手続通知”)をすることで開始します。

確約手続通知を受領した事業者が確約計画の認定を受けたいと考える場合には、通知を受けた日から60日以内に確約計画を作成し、認定申請を行う必要があります。

なお、確約手続通知の前後にかかわらず、事業者は公取委に対し、確約手続の利用に係る相談を行うことは可能です(確約手続対応方針3)。

 

2 確約手続の流れ

以下のような流れで手続が進みます。<詳しくはこちら「確約手続の流れ(詳細)」>出典:公正取引委員会ホームページ 確約手続 | 公正取引委員会 (jftc.go.jp)

 

3 公正取引委員会から確約手続通知を受けたらどうすべき?  

公取委から確約手続通知を受領したとしても、必ず確約計画の認定を申請しなければならないわけではありません。確約計画の認定申請を行わない場合、公取委が事実関係の調査を再開することになりますが、確約計画の認定申請をしなかったことを理由として公取委の調査手続において不利に扱われるわけでもありません。

しかし、確約計画が認定されると、その事業者は独占禁止法上の排除措置命令や課徴金納付命令は行われません。つまり、独占禁止法違反の認定を回避し、社会的評価の低下を防止できるというメリットがあります。

 

4 事務総長定例記者会見以降、確約手続はどう変わる?

令和6年7月3日、公取委の事務総長定例会見において、以下の変更が発表されました。(令和6年7月3日付け 事務総長定例会見記録 | 公正取引委員会 (jftc.go.jp)

①確約措置の履行期間を3年から5年へ

確約手続を適用した事案における確約措置の履行期間は、これまでの全ての事案について事実上3年間となっていましたが、今後は原則として、少なくとも5年間以上の履行期間とすることとなりました。

これは、違反被疑行為の対象となった製品のライフサイクルやサービスの契約期間、公正な競争を回復すること等を踏まえての変更とされています。

②確約措置の履行確保にあたり、原則として外部専門家の選任を行う

従前は、基本的に確約計画を提出した事業者が自ら履行し、それを公正取引委員会に委員会に報告するという形で、確約措置の履行を確保していました。他方で、確約措置の履行確保は、事業者だけで行うよりも、独立性のある外部専門家(弁護士、公認会計士等)の監視があったほうが、より確実な履行が期待できます。

そこで、今後は確約措置全体の履行について、外部専門家による監督が原則となりました。

また、記者会見の質疑応答では、罰則付きの公取委の調査権限を積極的に活用して履行状況の確認を行い、確約措置の確実な履行確保を図るといった方針も発表されました。つまり、確約計画の認定だけで安心というわけではなく、その履行の確保がより一層重要になってくるということです。

 

5 確約計画の具体例

前記のとおり、確約措置の履行にあたっては外部専門家の監督が原則になったり、履行期間が5年に伸長されたりする等、事業者にとって大きな変更がありました。他方、確約措置の基本的な考え方や典型例まで変更された訳ではありません。これまでに認定された確約計画の内容は以下のとおりです。

<事例紹介はこちら>

弁護士  吉田 由子
弁護士  六角 麻由
弁護士  向 多美子
弁護士 木田翔一郎

[1] 1件/H31・R1、5件/R2、2件/R3、5件/R4、3件/R5、4件/R6、1件/R7(R7.2.14現在)

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