景表法の確約手続について(不当景品類及び不当表示防止法の改正)
2025.03.28
2024年10月1日施行の改正「不当景品類及び不当表示防止法」(“景表法”)により、景表法違反の事件処理手続に確約手続が導入され、2025年2月26日には景表法の確約手続を初めて適用した事例が消費者庁より公表されました[1]。
そもそも確約手続とは何か?確約手続の導入により今後は何が変わるのか?という点について解説します。
1 確約手続とは
「確約手続」とは、優良誤認表示などの景表法違反の疑いのある行為(“被疑行為”)をした事業者が、是正措置計画又は(被疑行為が終了している場合は)影響是正措置計画(“確約計画”)を自主的に作成し、
消費者庁が、その計画で定められた確約措置について
①被疑行為・その影響を是正するために十分であること(措置内容の十分性)
②確実に実施されると見込まれること(措置実施の確実性)
の2つの要件を満たすと認定した場合、
被疑行為について、措置命令や課徴金納付命令といった法的措置を行わないようにする手続のことです。
確約手続の対象になるのは①景品類の制限及び禁止(景表法4条)と②不当な表示(優良誤認、有利誤認、誤認されるおそれがある表示、景表法5条)に違反する疑いのある行為です(景表法26条)。
確約手続は、消費者庁が被疑行為を行っている事業者に対し、
①被疑行為の概要
②違反する疑いのある又はあった法令の条項
③被疑行為・その影響を是正するために必要な措置の実施に関する確約計画の認定を受けるための申請ができる旨
の通知(“確約手続通知”)をすることで開始します。
なお、確約手続通知が送られる前でも、被疑行為について調査を受けている事業者は、調査対象の行為について、確約手続の対象になるか確認したり、確約手続に付すことの希望を申し出たりするなど、消費者庁に相談することができます。
2 確約手続の流れ
以下のような流れで手続が進んでいきます。
消費者庁表示対策課「【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概説」
3 消費者庁から確約手続通知を受けたらどうすべき?
消費者庁から確約手続通知を受領したとしても、確約計画の認定を申請する義務はありません。
確約計画の認定申請を行わない場合、消費者庁が確約手続通知送付前の調査を再開することになりますが、認定申請をしなかったことで不利に扱われるわけでもありません。
ただ、確約計画が認定されると、被疑行為について、法的手続に関する措置が適用されない(措置命令や課徴金命令が行われない)ことになるため、事業者にとっては景表法違反の認定を回避し、社会的評価の低下を防止できるという点でメリットがあります。
なお、確約計画が認定された場合、消費者庁から、事業者名、確約計画の概要、被疑事件の概要などが公表されますが、公表にあたっては、事業者が景表法の規定に違反したものでないことが付記されます。
確約計画の認定申請を行う場合には、確約手続通知を受けた日から60日以内に手続をする必要があります。
4 確約計画の具体例
景表法の確約手続は2024年10月に新たに施行されたばかりの制度であり、確約計画の運用や具体例については今後の事例の集積が待たれるところです。
この点、2024年4月18日付で消費者庁が作成した「確約手続に関する運用基準」内には確約計画で定めるべき以下のような確約措置の典型例が挙げられているので、参考になります[2]。2025年2月26日に公表された確約手続の初適用事例でも、下記のうち、①から⑤の内容が確約措置として定められました。
①被疑行為を取りやめること
②一般消費者への周知徹底
③被疑行為及び同種の行為が再び行われることを防止するための措置
(コンプライアンス体制の整備等)
④履行状況の報告
⑤一般消費者への被害回復
⑥契約変更
⑦取引条件の変更
これらの確約措置については、実施期限又は実施期間を記載することが必要な点にも注意が必要です(景表法27条2項2号、景表法31条2項2号)。上記初適用事例においても、「措置実施の確実性」の判断において、「措置の内容ごとに実施期限を設けていること」を根拠の1つに挙げています。
弁護士 吉田 由子
弁護士 六角 麻由
弁護士 向 多美子
弁護士 木田翔一郎
[1]https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms209_250226_01.pdf
[2]https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/assets/representation_cms216_240418_04.pdf